東山小学校

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四万十桧のハイブリッド木造校舎


四万十市立東山小学校の新校舎の改築プロジェクトに主任技術者として携わった。
築40年以上が経過し老朽化が進んだ旧校舎の増改築として計画された。雨漏りなどにより十分な学習環境の確保が難しくなっていた状況を受け、単なる建替えではなく、子どもたち、先生、保護者、そして地域の人々に長く愛され続ける「100年学舎」を目標に整備が進められた。

敷地の一部が土砂災害特別警戒区域に指定されていることから、建物は鉄筋コンクリート造(RC造)と木造を組み合わせた混構造(ハイブリッド構造)の2階建てとしている。土石の移動や堆積による外力に抵抗できるよう、斜面に面する1階部分をRC造とし、基壇としての強固な安全性を確保した。一方で、上階を木造とすることで建物全体の軽量化を図り、構造的合理性と環境的快適性を両立させている。

2階の主要構造材には、市産材である四万十ヒノキを積極的に採用した。ヒノキは構造材としての強度や耐久性に優れるだけでなく、独特の香りや木肌の質感が空間に柔らかな印象を与える。森林医学や木材環境研究において、ヒノキをはじめとする木材の香気成分にはリラックス効果があることが示されており、長時間を過ごす教育施設においては、子どもたちの情緒や集中環境を支える重要な要素となる。地域の森から生まれた木材が、子どもたちの学びの空間をつくるという循環もまた、この校舎の大きな意味のひとつである。

平面計画は、旧校舎の面影を残す中庭を中心に回遊できるロの字型のレイアウトを採用した。行き止まりのない回廊型の動線は、児童が迷わず移動できる明快な構成を生み出すと同時に、教職員が自然に子どもたちを見守ることができる環境をつくり出している。中庭を介して各空間が緩やかにつながることで、校舎全体に開放感と一体感が生まれている。

普通教室は全学年をグラウンドに面した南側に配置し、豊かな自然光を取り込める計画とした。9mスパンの教室空間を小径の市産材で成立させるため、橋梁構造で用いられるゲルバー梁の構造原理や、社寺建築に見られる舟肘木の考え方を現代的に応用した木構造を採用している。基本構法は一般的な木造住宅と同じ軸組工法をベースとしており、県内の木材加工業者による製作を可能とすることで、地域の技術と産業の循環にも寄与している。

玄関に隣接する特別活動室は、会議や発表、地域活動などにも活用できる多目的空間として整備されている。この空間は人工芝の中庭や図書室と連続し、「ひがしやまラーニングスクエア」として位置づけられ、多様な学習活動を展開する中心となる。学校という教育施設にとどまらず、地域の交流拠点としても機能することを意図した計画である。

新校舎は、日常の教育環境を支えると同時に、災害時には避難所として地域を守る役割も担う。RC造と木造、それぞれの特性を適材適所に活かしたこのハイブリッド構造は、安全性と木の温もりを併せ持つ学びの環境を実現している。地域の木と技術によってつくられたこの校舎は、これからの時代の教育と地域の安心を支える「100年学舎」として、静かに未来を育んでいく。

所在地:高知県四万十市
構造:鉄筋コンクリート造、木造2階建て
延床面積:4,332.44㎡
竣工:2021年12月
施工:サイバラ建設・長者工務店特定建設工事共同企業体(建築)
   株式会社福田電気工事店(電気設備)
   株式会社中村住設(機械設備)
用途:小学校

etc.上田建築事務所在籍時に主任技術者として本計画を担当、
基本設計から監理まで携わる。