桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

全国から多くの観光客が訪れる高知を代表する観光地「桂浜」敷地は太平洋と竜王岬を望む本浜の中心に位置する。南側は雄大な太平洋、北側は旧浦戸城を峰とする急峻な斜面を持つ。そして周辺には松原が厳しい環境に耐え抜き逞しく育つ。
土佐の強烈な自然環境を凝縮したこの空間は桂浜という場所柄も相俟ってか、恰も土佐人の豪快さ・開明さと結びつく。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

敷地を歩いてみた。
年々脅威となっている強い日差が海面と砂浜を照り返す。
しばらくして松原の袂に逃げ込んだが、針のような形態の葉からの木漏れ日に佇む光と影は、どことなく心もとないが厳しい自然環境の中で一種の安らぎを与えてくれる。
この「陽・陰」の対比に内在する繊細な「緊張感」、
これこそ桂浜、ひいては土佐人を体現するものではないだろうかと考え、建築をカタチづくるテーマとし設計を進めた。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

構成は単純明快に、天井・柱・壁という最小限の要素と、中央に据えたコアにより空間を形成。
その周囲を高知県産桧によるすり鉢状のルーバーが巡り、視線と風の抜けを導く。
松原のリズムと呼応するように木のスケールを重ね、回遊性を持つ「間」をつくった。
自然素材(木・漆喰)と人工素材(鉄・コンクリート)の対比は、素材感の明確な切断線を意図的に生み出し、「切れ味の美」を空間に宿す。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

休憩スペースのFLは台風時の高波に備えを砂浜より1.25m高(海抜8.2m)としている。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

休憩スペースより竜王岬を望む。木材は耐久性を考慮して全て高知県産材「桧」を使用。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

曲面に施した左官壁が緊張感と安らぎを生み出す。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

屋根には、耐塩害性に優れたチタン亜鉛合金板を採用。
展望スペースのパラペットまで一体で包み、風雨の浸入を排した。
軒先は流線型に絞り込み、風を受け流すディテールとした。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

モチーフとしたのは、土佐の荒波をしなやかに泳ぎ抜く鰹の体躯。
土地の風景から抽出した造形言語を、機能と一体化させることを試みた。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

建物を特徴付けるおおきな庇は、鉄筋コンクリート梁からキャンティにてスラブを跳ね出したもので、上下に鉄骨部材を均等割りにて配置することでたわみや偏心に対して抵抗する。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

2階の展望スペースへと向かう階段。視線の先には坂本龍馬像がある。

桂浜・本浜休憩所 五色のテラス
桂浜・本浜休憩所 五色のテラス

この建物は、ただ身体を休める場ではなく、風景に向き合う装置である。
静かに腰を下ろし、太平洋を眺める時間のなかで、来訪者は風土と対話し、次なる時間へと歩を進める。
一瞬の滞在が、記憶に残る余白となるように。
この建築は、桂浜という土地に根ざす物語と自然の緊張感に、応答するかたちで生まれた。

所在地:高知県高知市
構造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
延床面積:186.49㎡
竣工:2021年12月
施工:トラスト建設
用途:休憩所

etc.上田建築事務所在籍時に主任技術者として本計画を担当、
基本設計から実施設計まで一貫して携わる。